不均一経頭蓋磁気刺激による運動野神経回路の可塑的変化誘導機序の解明 Mechanisms of motor network plasticity induced by a patterned TMS protocol: a TMS-fMRI study
経頭蓋磁気刺激(TMS)により運動野興奮性を一過性に変化させる手法は、運動野に短期可塑性を誘導する実験手技としてだけでなく、精神・神経疾患の症状を改善させる治療法としても注目を集めている。しかし、TMSによる短期可塑性誘導のメカニズムには不明な点が多い。今回、短期可塑性を誘導する不均一TMSプロトコールの一つであるquadripulse stimulation (QPS)法が運動野興奮性を変化させるメカニズムを明らかにするため、運動野を興奮性させる5 ms-QPSと抑制効果が報告されている50 ms-QPSの前後にTMS、表面筋電図(EMG)とfMRIの同時計測を行った。5 ms-QPSでは、左運動野に対して、刺激間隔5 msの単相刺激4発を活動時運動閾値の90%の強度で5秒ごとに30分間与え、50 ms-QPSでは刺激間隔を50 msとした。TMS-EMG-fMRI同時計測では左運動野に単発TMSを閾値上と域値下それぞれ2種類の強度で与えた。EMG計測では、5 ms-QPS後には刺激前より大きな運動誘発電位(MEP)が計測され、5 ms-QPSにより運動野興奮性が増強したことが支持された。一方、50 ms-QPSではMEPの有意な変化は認めなかった。fMRIでTMS刺激強度に応答して増加する脳活動を検討したところ、両側運動前野と左頭頂葉で刺激強度への応答性が上昇していた。この結果は、5 ms-QPSが運動野と運動前野や頭頂葉の間の神経ネットワークに影響してMEPの変化をもたらしていることを示唆する。 |