脳卒中患者における反復経頭蓋磁気刺激の上肢運動機能に与える負の効果

Negative effects of rTMS on upper-limb motor function in stroke patients

  • 阿部 玄治 (東北大学大学院医学系研究科)
  • 大内田 裕
  • 鈴木 栄三郎
  • 内野 すみ江
  • 会津 直樹
  • 唐 志明
  • 長井 真弓
  • 出江 紳一 (東北大学大学院医工学研究科)
  • Genji Abe (Tohoku University Graduate School of Medicine)
  • Yutaka Oouchida
  • Eizaburo Suzuki
  • Sumie Uchino
  • Zhi-ming Tang
  • Mayumi Nagai
  • Shin-ichi Izumi (Tohoku University Graduate School of Biomedical Engineering)

[背景] 反復経頭蓋磁気刺激法(以下rTMS)は、脳の可塑的変化を引き起こすことや他の運動療法との組み合わせが可能であることから、脳卒中発症後の運動機能回復を目的とした効果的な治療手段である。脳卒中患者へのrTMSの刺激方法には、健側半球へ刺激する低頻度rTMSや連続シータバースト刺激(以下cTBS)、また患側半球に刺激する高頻度rTMSや間欠シータバースト刺激(以下iTBS)など、多くの刺激方法がある。したがって、臨床で用いる際には、これら刺激方法の中から少なくとも運動機能低下を引き起こさない刺激方法を選択する必要がある。しかしながら、これまでに同一被験者を対象に異なる刺激方法を行い、その効果を検討した報告は見当たらない。そこで本研究は、同一被験者を対象に、上記4種類のrTMSが運動機能低下を引き起こすのか検討した。 [方法] 慢性期脳卒中片麻痺患者5名を対象とした。対象は、最大伸展角度の向上を目的とした低頻度rTMS、cTBS、高頻度rTMS、iTBSをそれぞれ異なる日に行った。我々は、運動機能の評価として手指の最大伸展角度を電気角度計で計測し、各刺激前後の変化を比較した。 [結果] 低頻度rTMSでは5名中4名で最大伸展角度の向上が認め、1名で最大伸展角度の低下を認めた。cTBSと高頻度rTMSでは2名、iTBSでは1名に最大伸展角度の低下を認めた。 [考察] 本研究の結果より脳卒中患者へのrTMSは、どの刺激方法においても運動機能低下を引き起こす可能性があることが示唆された。そのためrTMSを臨床上用いる際には、患者ごとに各刺激の効果を検討した上で用いる必要がある。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32