てんかんモデルラットにおいて局所脳冷却は速波成分を抑制する Focal brain cooling terminates the faster frequency components of epileptic discharges induced by penicillin G in rats
我々はこれまで局所脳冷却がてんかん治療に効果的であることを報告してきた。しかしながら、冷却温度と抑制時脳波の周波数成分の関係は明らかになっていない。そこで我々はてんかんラットモデルを作成し、周波数成分解析によりてんかん波に対する局所脳冷却の効果を検討した。 てんかんモデルを作成するために、ウレタン麻酔したSDラット大脳皮質運動野にペニシリンGカリウム(2000IU)を投与した(n = 5)。また投与部位硬膜上に脳波電極、温度センサー、ペルティエ式脳冷却装置を静置し、持続的な皮質脳波・脳表温度記録を実施した。実験後、高速フーリエ変換によるオフライン周波数解析を行った。 皮質内のペニシリンG投与によって、1時間以上持続するてんかん性放電が観察された。周波数解析から有意に増加した脳波成分はα波(9-14 Hz)とβ1波(14-24 Hz)であることが示された。十分なてんかん性放電が観察された後、25℃・20℃・15℃の条件で脳局所冷却を行った。1)25℃ではてんかん性放電成分のうちβ1のみが有意に抑制された。2)20℃ではα波、β1波の両方が有意に抑制された。3)15℃ではどの周波数成分も抑制され、てんかん性放電は消失した。本研究により、皮質表層からの局所脳冷却の効果は一様ではなく、高周波数成分から抑制されることが分かった。また周波数解析により25℃においても有意な冷却効果が示され、この知見は今後のてんかん治療戦略において有意義なものと考えられる。 |