タッピング運動における空間・回数系列に関わる神経基盤の比較

The neural basis of spatial and repetitive sequences

  • 細田 千尋
  • 花川 隆
  • Chihiro Hosoda
  • Takashi Hanakawa

系列動作の実行や学習の神経機構は、認知操作の中心となる前頭前野と運動実行に重要な一次運動野の中継地点である高次運動野の機能の重要性が明らかになっている。しかし、複数存在する高次運動野のうち、どの領域が系列動作に重要であるかについては、内側面の前補足運動野(pre-SMA)や補足運動野(SMA)の果たす役割が示されている一方で、外側面の背側運動前野(PMd)の機能が重要であることを示すデータもある。実は、過去の神経生理・機能画像研究では同じ系列という名のもとに、様々な動作の定義が用いられているため、異なる研究間で比較解釈することが難しい。そこで本研究では、手指タッピングを用いた系列動作において、次にどの指をタップするかを空間配列、同じ指をタップする回数を回数系列と定義し、それぞれの系列の単位を長くすることで複雑にした場合にどの脳領域が応答するかの検討を健常成人17名で行った。脳活動の測定は3テスラfMRIで行った。空間配列と回数系列に関わる脳活動の大きさを単純比較すると、空間配列では左PMdや頭頂間溝の活動がより大きく、回数系列ではSMA、被殻前部、左下頭頂葉などの活動がより大きかった。また空間配列の複雑さに伴って左PMdの活動が増加し、回数配列の複雑さに伴ってSMAと左下頭頂葉の活動が増加した。空間配列動作と回数系列動作は異なる神経基盤によって制御されていることが示された。以上の結果は、空間配列動作など空間情報処理の負荷が高い系列運動課題にはPMdの機能が重要であり、タイミングや回数など空間配列として処理できない情報処理に基づく系列動作はSMAが担っている可能性を示唆した。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32