投球におけるボールコントロールのための協調動作の解析

An analysis of the synergy in a ball throwing task

  • 木村 嘉志 (山口大学大学院理工学研究科)
  • 西井 淳
  • Hiroshi Kimura(Yamaguchi University, Graduate School Science and Engineering)
  • Jun Nishii

 野球においてコントロール良く投球することは重要である.そのためには,ボールのリリース位置,投射角度,初速度という3つの状態変数を適切に決定する必要がある.その方法として,各変数の目標値をそれぞれ定め,その各値を正確に実現できるように投球を行う方法と,リリース位置が高くなったら投射角度を小さくするというように,各変数の値は一球毎にばらついていても協調的にその値を変化させることで標的を狙うという2つの方法が考えられる.本研究の目的はコントロールの良い人がどちらの方法を用いているかを調べることで投球のコツを探ることである.  本研究では野球経験9年以上の者3人,未経験者3人の被験者が椅子に座った状態で,前方にある標的めがけて投球を行った際,ボールのリリース位置,投射角度,初速度の各状態変数間に協調的変化が観察されるかをUCM解析により調べた.その結果,いずれの被験者についても状態変数間の協調的変化が観察され,また,コントロールが良い人ほど協調度がより高くなる傾向があることがわかった. さらに,どの状態変数間の協調的変化がより強く観察されるかを解析したところ,コントロールが良い人ほど初速度と投射角度の協調的変化が強く生じており,一方でリリース位置のばらつきは小さくなっていることがわかった.  野球の投手へのコントロール向上のため,リリースポイントを一定にするよう指導する指導者は多い。本研究結果は,この指導が妥当であることを示す一方で,さらに,コントロール向上のためには初速度と投射角度を協調的に変化させることに注目した練習も効果的であることを示唆している。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32