皮質運動野における multi unit activity に対する経頭蓋直流電気刺激の影響

Effects of the transcranial direct current stimulation on multi-unit neural activities in the rat motor cortex

  • 田中 智子 (国立精神・神経医療研究センター)
  • 磯村 宜和 (玉川大学脳科学研究所)
  • 花川 隆 (国立精神・神経医療研究センター)
  • 本田 学 (国立精神・神経医療研究センター)
  • Tomoko Tanaka (National Center of Neurology and Psychiatry)
  • Yoshikazu Isomura (Tamagawa University)
  • Takashi Hanakawa (National Center of Neurology and Psychiatry)
  • Manabu Honda (National Center of Neurology and Psychiatry)

近年、非侵襲脳刺激法の一種である経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は神経疾患や加齢に伴う運動・認知機能低下を代償する手段として臨床応用が期待されているが、その作用メカニズムはほとんど理解されていない。我々は正常なラットの運動野へ陰極tDCSを印加することにより、線条体細胞外ドパミン濃度が増加することを報告している。このメカニズムとして、刺激電極直下の運動野における神経活動の関与が想定される。そこで本研究では、運動野へのtDCS処置が、刺激電極直下のmulti unit activity(MUA)に与える影響を検討するため、ウレタン麻酔下のラットを用いて、multi-neuron recordingを実施した。記録開始から2時間後、運動野上の頭皮に設置した電極を陰極、首に設置した電極を陽極とし、800μAの直流電流を10分間(Cathodal tDCS group, n = 6)または10μAを10秒間(Sham group, n = 4)印加した。その後2時間にわたり経時的変化を記録した。MUAはtDCS処置前1時間あたりの発火頻度をベースラインとして、1時間毎の発火頻度をベースラインの百分率として解析した。その結果、Cathodal tDCS groupにおいて、運動野のMUAは190%に達する増加が認められた。この増加はtDCS処置後少なくとも2時間持続した。本研究は陰極tDCS刺激が刺激直下のMUAに対して1時間を超える事後効果を持つことを示した。この事後効果は我々が以前に報告した線条体細胞外ドパミン濃度に対する長時間にわたる陰極tDCSの影響と関係している可能性がある。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32