小脳V,VI小葉外側部が受ける2種類の運動制御情報

Two different inputs to the cerebellar lobuli V and VI for motor control.

  • 戸松 彩花 ( (公財)東京都医学総合研究所)
  • 石川 享宏 ( (公財)東京都医学総合研究所)
  • 角田 吉昭 (理化学研究所)
  • 筧 慎二 ( (公財)東京都医学総合研究所)
  • Saeka Tomatsu (Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science)
  • Takahiro Ishikawa (Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science)
  • Yoshiaki Tsunoda (RIKEN)
  • Shinji Kakei (Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science)

小脳はその規則的な細胞構築から,システマティックな計算能力を持ちうると考えられてきた.特に運動制御においては種々の内部モデルとしての機能を果たすとの仮説が有力である.反射的な眼球運動における逆モデルとしての小脳の役割は既に小脳(傍)片葉で確認されている(Ito & Nagao, 1991, Shidara et al., 1993)が,小脳の他の部位,特に大脳−小脳ループを形成する小脳半球部においても同様のメカニズムが働いているかは明らかでない.  我々は,手首運動中のサルの小脳ニューロン記録から,一次運動野(M1)とループ構造を持つ小脳半球部V,VI小葉に対して,(1)運動指令のエファレンスコピーと(2)現在の姿勢に関する情報が別々に入力することを見いだした.このことは,小脳半球部V,VI小葉が「順モデル」として働きうる可能性を示しており,運動制御システムにおける小脳の役割は部位によって異なるといえる.  エファレンスコピー入力は,(1)大脳皮質の投射を受けて小脳に苔状線維を送り込む橋核ニューロンの活動変化開始時刻がM1より遅い,(2)同ニューロン活動の時間的パターンがM1と類似する,(3)同ニューロンの活動に含まれる情報内容がM1と類似すること等から判断される.また,自発発火の頻度が運動の姿勢条件で異なる「姿勢依存ニューロン」の割合が,橋核ニューロンよりプルキンエ細胞(PC)で高かった.これは,姿勢依存の求心性活動が感覚野から橋核経由もしくは楔状束小脳路等によって小脳半球部内側にもたらされ,記録対象のPCに入力したと解釈される.



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:58:11