三叉神経運動核周囲領域に存在するプレモーターニューロンの形態学的および電気生理学的特性 Physiological and morphological features of rat trigeminal premotor neurons in the supratrigeminal regions
三叉神経運動核(MoV)周囲網様体には、MoVに出力を送るプレモーターニューロン群が豊富に存在することが報告されており、顎運動の制御に重要な役割を果たしていると考えられている。我々はこれまで、閉口筋および開口筋運動ニューロンに興奮性および抑制性出力を送るプレモーターニューロンが三叉神経上核(SupV)に存在することを報告してきた。しかしSupVプレモーターニューロンの電気生理学的および形態学的性質は未だ不明である。そこで本研究では、カルシウムイメージングを用いて同定したSupVプレモーターニューロンの電気生理学的および形態学的特性について解析した。生後1~6日齢Wistar系ラット脳幹スライス標本上のMoVを電気刺激すると、短潜時で細胞内カルシウム濃度の上昇を示すニューロンが、SupVに1232ニューロン中139個(11.2%)認められた。139個中38ニューロンからパッチクランプ記録を行ったところ、32個のニューロン(84.2%)でMoVの電気刺激(100 Hz、3連発)に逆行性応答を示した。これらのニューロンは、発火特性に基づいて高頻度スパイク発射型(HF)ニューロンと低頻度スパイク発射型(LF)ニューロンに分類された。さらに記録したHF、LFニューロンを形態学的に検索したところ、樹状突起の分布および軸索の走行様式に両ニューロングループ間で差が認められた。以上の結果から、SupVに存在するプレモーターニューロンは、様々な電気生理学的および形態学的特性を有し、複雑で多様な下顎運動の遂行に重要な役割を果たしている可能性が考えられる。 |