モルモットのレム睡眠中に認められる咀嚼様の協調性下顎運動 Phasic bursts of the antagonistic jaw muscles are coordinated during REM sleep in the guinea pigs
レム睡眠では持続的な運動抑制(muscle atonia)が特徴的であるが、げっ歯類やヒト乳児では口腔顔面の筋にphasic twitchesが著明に認められる。口腔顔面の筋は、前運動ニューロンを共有し、覚醒中の摂食行動などで協調運動を示す。本研究では、自由行動下のモルモットにおいて、拮抗筋(開閉口筋)である咬筋と顎二腹筋の筋活動と下顎運動を同時記録し、レム睡眠中のphasicな筋バーストの発現に何らかの協調性がないかを調べた。レム睡眠中、両筋に反復性のphasicなバースト群が断続的に出現した。そこで、レム睡眠中と咀嚼運動中に認められる開閉口筋のphasicなバーストの特性を比較した。レム睡眠中のバースト活動量は、咀嚼に比して有意に低かった。一方、いずれの筋においても、レム睡眠のバースト持続時間の分布様式は、咀嚼と同様に1峰性であった。咬筋のバースト持続時間は、レム睡眠よりも咀嚼時で長かったが、顎二腹筋では差が認められなかった。レム睡眠のバースト発生間隔は、咀嚼中のものと似た範囲に分布し、レム睡眠と咀嚼で差を認めなかった。さらに、開閉口筋の一方の筋のバースト開始時点を起点として他方の筋の活動を加算平均すると、レム睡眠中の両筋のバーストはtime-lockedな時間的相関を示し、咀嚼中の開閉口筋の時間的相関と類似していた。以上のことから、リズミカルな咀嚼運動を調節する神経機構がレム睡眠中のphasic twitchesの発現に関与することが示唆された。 |