目は口ほどにものを言う:サッカードから運動の分節化を探る

The eye is the mirror of the soul: exploring segmentation of the movement through saccades

  • 鍋 知宏 (東京工業大学大学院 総合理工学研究科 知能システム科学専攻)
  • 宮下 英三
  • Tomohiro Nabe (Dept. Computa. Intelligence & Systems Sci., Interdisciplinary Grad. Sch. Sci. & Engineer., Tokyo Institute of Technology, Yokohama, Japan)
  • Eizo Miyashita

人間は身体を駆使し他の動物では真似のできない複雑で多彩な運動を行うことが可能である。このような一見複雑に見える運動は、より単純な運動の連続としてとらえることができる。例えば図形を描画する腕の運動に注目すると、描き始めから描き終わりまでを1つの運動としてとらえると複雑であるが、三角形や四角形等の直線で構成される図形に関しては、直線部分において到達運動を連続して繰り返すことが報告されている。すなわち、このような図形を描画する際には図形の各頂点で運動が分節化されることが示されている。それでは、円などの頂点の無い曲線で構成される図形を描画する際、分節点は存在するのだろうか、あるとすればどこが分節点となるのだろうか。本研究は曲線図形を描画する際の分節化を視線位置と手先位置を計測することにより検討した。具体的には、サルを訓練し円形の曲線図形を8つの異なる開始点から時計回り・反時計回りの2方向に描画させた。その結果、手先位相に先行してサッカードが生じることが分かった。また、これらのサッカードは描画方向と開始点にかかわらず描画運動の前半に振幅の小さいサッカードが数回に分けて生じ、描画運動の後半に、運動終点にむけて振幅の大きいサッカードが生じる傾向があることが分かった。さらに、サッカードは手先軌道の曲率の変曲点付近で生じることが分かった。これらの結果は頂点の無い曲線で構成される図形を描画する際も分節化が生じることを示唆している。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32