運動プリミティブによって規定される左右の腕の機能的差異

Functional advantage of non-dominant arm as revealed by lateralized tuning of motor primitive

  • 横井 惇 (東京大学大学院教育学研究科,日本学術振興会)
  • 平島 雅也 (東京大学大学院教育学研究科)
  • 野崎 大地 (東京大学大学院教育学研究科)
  • Atsushi Yokoi (Grad. School of Education, Univ. of Tokyo, JSPS )
  • Masaya Hirashima (Grad. School of Education, Univ. of Tokyo)
  • Daichi Nozaki (Grad. School of Education, Univ. of Tokyo)

両腕で動作を行う際、利き手が主要な作業を行い、非利き手はそれを支える、という一貫した傾向が存在する。このような役割分担は、左右の制御系の制御様式の差を反映していると考えられているが(Sainburg 2002)、その具体的メカニズムについては明らかでない。今回の発表では、このような左右差が生じる仕組みを制御系の構成素子(運動プリミティブ)の特性における左右差から説明する。  我々はこれまでに、両腕運動中にそれぞれの腕運動に用いられる素子が両方の腕の運動情報を同時に表現していることを明らかにした(Yokoi et al. 2011)。同様の方法を用いて両腕運動中の左右の腕の素子のパラメータ推定を行い、その左右差から予測される左右の腕の運動学習能力の差を実験的に検証した。12名の右利き被験者に両腕到達運動課題を行わせ、一方の腕の運動方向(4方向のうちどれか:0,90,180,270º)に応じて反対側の腕に時計回り(CW)または反時計回り(CCW)の力場が加えられる環境に適応させた(例:[0:CW],[90:CCW],[180:CW],[270:CW])。その結果、左腕で学習を行った群(6名)が右腕学習群(6名)と比べて有意に高い学習量を示した(p<0.05)。また、これらの結果は推定された素子の左右差から予測される値と高い一致を示した。  以上の結果は、両腕運動中は非利き手の方が反対側の腕によって生じる外乱に素早く適応できるという優位性を示唆しており、このような制御系の構成要素の特性から導かれる機能的差異が、両腕協調動作における役割分担の発現に寄与している可能性を示している。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32