少数筋群からなるフェーズ分けによる運動学習 Motor Learning by Phase Division with Sparse Coding of Muscle Activation
動物の運動指令は少数のプリミティブからなるという筋シナジーの考えのもと,多くの研究においてプリミティブの抽出方法が検討されている.動物はこうしたプリミティブを用いることで,多数の筋を少ない次元で扱い,運動生成を容易にしていると考えられ,運動学習の観点からも興味深い.プリミティブの抽出には,PCA,ICAやNNMF(Ivanenko et al., 2005)といった数理的な独立性に基づく手法が広く用いられている.一方,運動野の知見に基づき発火同期に着目したプリミティブの抽出方法(Krouchev et al., 2006)も提案されている.この手法においてプリミティブがフェーズ毎になっている点,各プリミティブは少数の筋群からなる点が,運動学習においても有用と考え,本研究ではこの2点に着目する. そこで,本研究では,こうしたフェーズ分けと少数の筋で表す運動表現の運動学習に対する有効性の検討を行うことを目的とする.そのために,ロボットによる実証の第一歩として動力学シミュレータを用いた走行動作の学習を行った. 具体的には,フェーズ分けと各フェーズでの筋群の指令値で表される運動表現としてSparse Coding of Activation(Niiyama et al., 2009)を用いて運動学習を行った.指令値の初期値はヒトの走行中の筋電値データから決定した. 結果,14筋という自由度に対し,数百オーダーの比較的少ない試行回数で平均8m程度まで走行距離を伸ばすことができた.このことから,少数筋群からなるフェーズ分けが効率的な運動学習に有効であることが示唆される. |