サブリミナルプライミングによる応答の促進と阻害~日常生活物品を視覚呈示に用いて~

Response facilitation and inhibition in subliminal priming.

  • 青木 智子 (畿央大学 大学院 修士課程 医療法人孟仁会 東大阪山路病院)
  • 信迫 悟志(医療法人孟仁会 東大阪山路病院)
  • 森岡 周(畿央大学 大学院健康科学研究科)
  • Tomoko Aoki 1,2
  • Satoshi Nobusako 2
  • Shu Morioka 1
  • 1.Department of Neurorehabilitation, Graduate School of Health Sciences, Kio University
  • 2.Department of Rehabilitation, Higashi Osaka Yamaji Hospital

補足運動野損傷において生じる道具の強迫的使用現象は,運動前野を中心とする刺激-反応運動系と補足運動野を中心とする内的表象-随意運動系の拮抗的システム(Della Sala1994)の破綻により生じるといわれている。補足運動野は競合する行為計画の無意識的・不随意的な抑制に関わっており,自動的な運動計画とその抑制について視覚性逆行マスキング課題を用いた研究(Eimer2003)が報告されており,prime刺激からtarget刺激までの時間感覚(SOA)が短い時には反応時間に正のプライミング効果が得られ,長いSOA条件では負のプライミング効果が得られることが明らかになっている。また補足運動野損傷患者を対象にした研究では,長いSOA条件で正のプライミング効果が得られることが報告されている。(Sumner2007)これらの先行研究では,primeやtargetに記号を用いており,道具の強迫的使用に特異的である日常生活物品を視覚呈示に用いた自動的な運動計画と抑制についての報告はない。そこで今回,物品の写真をprimeとtargetに用いて調査した。結果,先行研究同様に短いSOAでは記号,物品ともに反応時間に正のプライミング効果が得られ、長いSOAでも同様に記号,物品において負のプライミング効果が得られた。また短いSOAでは,物品の方が正のプライミング効果が大きく,長いSOAでは記号において負のプライミング効果が大きかった。このことは,運動前野の自動的活性化が抽象的な記号よりもより日常生活に則した物品において促進され易いことを表しており,道具の強迫的使用の発現機序を説明し得ると思われる。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32