脳波筋電図コヒーレンスを用いた緊張性振動反射の発生メカニズムに関する検討 Study on mechanism of tonic vibration reflex using corticomuscular coherence
腱への持続的な振動刺激により誘発される筋の不随意活動は緊張性振動反射 (Tonic Vibration Reflex, TVR) とよばれる.従来,TVRは伸張反射回路の連続駆動によって発生していると考えられてきた (Lance, 1966) .その後,上位運動ニューロン障害患者ではTVRが検出されにくいことが報告され,TVR発現への上位中枢の関与が間接的に示唆されてからは (Hagbarth, et al., 1968) その発現メカニズムについて詳細な検討はおこなわれてこなかった.そこで本研究では,脳波-表面筋電図間および脳波-針筋電図間のコヒーレンス解析を用いて,TVRに対する大脳皮質活動の関与を直接的に明らかにすることを目的とした.実験では健常成人を対象として,座位にて右アキレス腱へ振動刺激を与え,同側ヒラメ筋から表面筋電図および針筋電図を,体性感覚運動野足部支配領域近傍の頭皮上からは脳波を計測した.結果,TVR発現時には,随意収縮時と同様に,脳波-筋電図間に,20 Hz帯域で有意なコヒーレンスが観察された.これは,TVR発現に経皮質経路が関与していることを示していると考えられた.次に,針筋電図で記録した単一の運動単位活動を,各打腱時刻から伸張反射潜時相当の時間遅れで発火している群と,それ以外の発火群に分離した.それぞれについて,脳波とのコヒーレンスを解析した結果,後者の発火群にのみ20 Hz帯域で有意なコヒーレンスが観察された.以上の結果から,TVRは伸張反射によって賦活される成分と,経皮質経路によって賦活される成分とが混在して,発生していることが示唆された. |