大腿部における筋のシナジー活動 Muscle Synergy Around Knee and Hip Joints during Isometric Contractions
【目的】複雑な動作を行う際,中枢神経系が膨大な情報をより組織化するためにとっている戦略として,機能的に類似した筋をまとめて支配する,シナジーという概念が提唱されてきた.すなわち,中枢神経系からの入力は直接筋ではなくシナジーに伝えられるため,この入力が力発揮という出力に大きく関係していると考えられる.本研究は,力変動とシナジーの総活動量との関連から,未だ概念であるシナジーを定量することを目的とした. 【方法】被検者は,健常成人男性6名であった.実験は椅座位にて行った.実験課題は,水平面上で30°毎,12方向へ,20秒間の等尺性の力発揮とした.力の大きさは,10N,20Nとし,計24試行行った.課題中,大腿部周りの計12筋より,表面筋電図を導出した.力は足関節上部に装着した3分力計により記録した.前後方向と内外方向の力波形から目標とする方向に対する力のばらつきとして,η値を算出した(Kutch JJ et al., 2008).また,被検者,力の大きさ毎に,12筋,12方向の各表面筋電図平均振幅から,12×12の正方行列を作った.作成された行列に対して,NMF解析(Lee DD & Seung HS, 1999)により,シナジーとその活動度を表す2つの行列に分解した. 【結果・考察】各方向に対するシナジーの総活動度と,η値の間には高い負の相関があった.これは,中枢神経系からシナジーへの総入力量が多いほど,目標とする方向に対する力のばらつきが大きくなることを表している.またこの結果は,従来概念として考えられてきたシナジーが,実際に生体内に存在することを示唆している. |