身体の力学的特性による歩行時の脚関節間シナジー

Body dynamics brings leg joint synergy during walking

  • 豊田 誠治 (山口大学大学院理工学研究科)
  • 垣内田 翔子
  • 橋爪 善光
  • 西井 淳
  • Seiji Toyota (Graduate School of Science and Engineering, Yamaguchi University)
  • Shoko Kaichida
  • Yoshimitsu Hashizume
  • Jun Nishii

 ヒトの歩行における脚関節軌道は1 歩毎に若干異なるが、例えば、遊脚中に振り出した足先が床に近づきつまづき易くなる瞬間などの転倒防止に重要な時期には、足先位置のばらつきを抑える関節間の相補的な協調運動が観察される。このような脚関節間シナジーは、中枢神経系の制御により生じている可能性の他、筋骨格系の力学的特性により生じている可能性もある。本研究ではこの点を明らかにするため、アクチュエータを持たず重力のみを利用した歩行を行える受動歩行機における脚関節間シナジーを調べ、ヒトの場合と比較を行った。  その結果、受動歩行機とヒトの両者において、踝が地面から離れて踝を上へ持ち上げる時期に踝関節の水平位置を調節する関節間シナジーが、また、遊脚中に振り出した脚の踝関節が膝関節の真下を通る時期に踝関節の鉛直位置を調整する関節間シナジーが働いていることが分かった。すなわち、ヒトの歩行におけるこれらのシナジーは、身体の力学的特性により生じている可能性が高い。そして前者は重心の水平位置の揺動を小さくし、後者は地面との接触によるつまずきを避けることで安定した歩行の実現をすることに寄与していると考えられる。一方、ヒトの場合にのみ接地期後期に腰の高さを調節するシナジーが観察された。これは体幹位置を調節して転倒を防止するために中枢神経系の制御によって生じたシナジーである可能性が高い。以上の結果は、ヒトは身体の力学的特性によって生じる脚関節間シナジーを活用し、さらに中枢神経系の制御を加えることで歩行の安定化を図っていることを示唆する。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32