運動学シナジーに基づくヒトの歩行制御構造の力学解析

Dynamical analysis on the control structure of human locomotion using kinematic synergies

  • 舩戸 徹郎 (同志社大学, JST CREST)
  • 青井 伸也 (京都大学, JST CREST)
  • 冨田 望 (同志社大学, JST CREST)
  • 土屋 和雄 (同志社大学, JST CREST)
  • Tetsuro Funato (Doshisha University, JST CREST)
  • Shinya Aoi (Kyoto University, JST CREST)
  • Nozomi Tomita (Doshisha University, JST CREST)
  • Kazuo Tsuchiya (Doshisha University, JST CREST)

ヒトの歩行は冗長な筋・骨格と環境との相互作用によって生成される複雑なシステムであり、ヒトはこの冗長な体をうまく利用して環境に適応する。実験によって、歩行中の全身の筋・関節は相互に高い相関を保って動くと指摘されており、運動全体を組織化する構造:シナジーがみられる。ヒトの冗長制御の性質を反映したシナジーの性質は、様々な実験・解析を通して論じられており、特に脊髄小脳路における上向性の信号と運動学シナジーの時系列信号に高い相関が観察されることから(Poppele RE et al., J Neurophysiol, 2002, Ivanenko Y et al., J Neurosci, 2007)、シナジーが直接フィードバック制御系に関与することが期待される。一方で実験的な研究のみでは制御戦略の違いと環境からの反作用を区別することができず、制御構造を論じるには困難があった。本研究では、歩行実験によって関節の動きから求めた運動学シナジーを常にフィードバックする制御系と、7リンクの骨格モデルを組み合わせたシステムモデルを構築し、構成論的にヒトの制御戦略を調べている。実験データと制御モデルの生理的知見に基づいて本研究で構築されたシステムモデルは、平地及び傾斜面上で安定な歩行を示し、ヒトの歩行実験と同様の運動学シナジーを示した。さらに、シナジーに対する制御及び環境に応じた姿勢制御の寄与を変化させて運動の変化を調べることで、環境に応じた全身の姿勢変化が体幹の変化の反作用として生じること、斜面に応じたシナジーの調整が歩行適応に有意に働くことを示した。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32