スプリットベルトトレッドミルを用いたヒト二足歩行運動の位相反応曲線の測定 Phase response curve to a perturbation induced by a split-belt treadmill in human bipedal walking.
ヒトは、不意の外乱に対しても、転倒することなく二足歩行運動を持続することができる。このようなヒトの適応的歩行運動の生成メカニズムを明らかにすることを目的として、ヒトの歩行中の外乱応答を調べる実験的研究が行われているが、近年、脊髄リズム生成神経回路網から下肢の各筋へ送られる律動的運動指令の、外乱入力に対するリズム(位相)の修正が、適応的歩行運動の生成に本質的に重要であることが示唆されている。しかし、ヒトの歩行中に外乱を与え、そのときに起こる身体応答と歩行リズムの修正を計測し、そこから適応的歩行運動の生成原理に迫る試みはほとんど行われていない。そこで本研究では、スプリットベルトトレッドミルを用いてヒトの二足歩行時に外乱を与え、ヒトの歩行リズムの修正メカニズムを明らかにすることを目的とした。具体的には、スプリットベルトトレッドミル上を一定速度で歩行する4名の被験者に対して、ベルト速度を瞬間的に減速・加速させることで支持脚に外乱を作用させた。そして、外乱の入力位相(タイミング)と歩行リズムの修正量(リセット量)の関係を位相反応曲線として求めた。その結果、歩行の位相は減速外乱においては遅れ、加速外乱においては進むこと、また外乱位相の修正量は外乱の入力位相に依存し、両者の間には減速外乱では負の、加速外乱では正の相関があること、立脚期前半で位相の修正量が大きく、後半で小さくなること、などが明らかとなった。このような歩行リズムの調節機構が、外乱に対する歩行運動の適応機能に大きく寄与していると予想される。 |