ヒト歩容遷移運動時のキネマティクスデータ解析

Kinematic analysis of human gait transition

  • 冨田 望 (同志社大学 / JST CREST)
  • 上江洲 佑典 (同志社大学)
  • 勝部 晃將 (同志社大学)
  • 舩戸 徹郎 (同志社大学 / JST CREST)
  • 青井 伸也 (京都大学 / JST CREST)
  • 土屋 和雄 (同志社大学 / JST CREST)
  • Nozomi TOMITA (Doshisha Univ. / JST CREST)
  • Yusuke UESU (Doshisha Univ.)
  • Akimasa KATSUBE (Doshisha Univ.)
  • Tetsuro FUNATO (Doshisha Univ. / JST CREST)
  • Shinya AOI (Kyoto Univ. / JST CREST)
  • Kazuo TSUCHIYA (Doshisha Univ. / JST CREST)

ヒトは運動速度などに応じて歩行から走行,走行から歩行へと歩容を遷移させる.歩行と走行はどちらも左右対称な歩容であるが,その力学的メカニズムは大きく異なる.歩行は,接地脚中に膝があまり曲がらず,倒立振子でモデル化される運動である.一方,走行は接地脚中に膝が曲がるばね質量系でモデル化される運動である.これら力学的に異なる歩容がどのようなメカニズムで遷移するのか,未だ明らかにされていない.

過去の定常速度運動における研究として,BorgeheseらやIvanenkoらは歩行,走行の際の大腿,脛,足のリンク絶対角を3次元状態空間に描くと,その軌跡は速度や被験者によらず,ほぼ一定の2次元平面に拘束されることを示した.これら結果はある種の脚内協調関係が存在することを示しており,それを実現する制御拘束が作用している可能性が示唆されている.また,遷移時のキネマティクスデータを分析した数少ない研究として,Segersらの研究が挙げられる.彼らは,遷移時のヒトのリンクモデルから定義される絶対角や相対角の分析から,歩行走行遷移がほぼ一歩で完了することを示した.しかし,この研究では遷移付近における制御拘束について言及していない.

本研究では,まず脚間の動きに注目することで,遷移がどのようなダイナミクスで実現されているかを調べた.その上で,特異値分解法により遷移時の脚内の協調関係を観察した.その結果,歩行走行遷移における第1モードの空間基底は変化せず,第2モードは1ステップ以下の時間で瞬間的に変化することがわかった.



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32