皮質盲視野における連合学習 Associative learning in blindsight
人は目的を達成するために行動を考え、意思決定をし、遂行している。その目的は利益や危機回避などの報酬に分類されるものが多い。一方、人間がとる行動の中には無意識に行われているものが多く含まれている。報酬を得るためにとる行動もまた、無意識下で行っているものがあると考えられる。しかし、無意識下で報酬を得るための適切な行動を学習することは可能かについてはほとんど調べられていない。本研究では、意識に上らない感覚情報と報酬の関連を学習出来るかを明らかにすることを目的とした。無意識下での感覚情報の処理を調べるために“盲視”のモデル動物であるニホンザルを使用した。第一次視覚野を損傷すると反対側視野に提示された対象を見えるという知覚意識がなくなるが、一部の患者ではその対象に手を伸ばしたり目を向けることができるという報告がある。この現象は盲視と呼ばれている。本研究では、片側第一次視覚野を損傷したサルの障害視野内に視覚刺激を提示することで、意識に上らない視覚刺激の位置と報酬量との関連を学習させた。サルは課題中、画面中央の注視点を見続ける。注視中に提示位置により区別され、得られる報酬量とタイミングが異なるCS+(多い報酬を示す)およびCS-(少ない報酬を示す)を視野内に提示する。これらのCSをもとに、報酬の量および得られるタイミングを学習し、それに適した行動(licking:報酬の出るチューブを舐める行動)を予測的に行うようになるかを検証した。その結果、CS+刺激に対して予測的なlicking行動が学習されたことから、意識に上らない視覚刺激と報酬との関係について学習を行うことが可能であることが判った。 |