随意運動司令による皮膚感覚入力の制御:脊髄及び大脳皮質における感覚抑制

Modulation of sensory evoked potentials at spinal and cortical level during voluntary wrist movement of monkeys

  • 関 和彦 (国立精神神経医療研究センター神経研究所)
  • Kazuhiko SEKI (National Institute of Neuroscience)

すべての運動は必然的に感覚信号を生む。この運動に付随して起こる感覚信号は求心性神経を介してやはり必然的に中枢神経系の神経細胞を活性化し、直接間接的に運動制御と関連する。しかし、この半自動的に引き起こされる感覚信号の全てが、今行われている運動のコントロールに有用だとは思えない。脊髄損傷など反射回路の亢進などによって引き起こされる感覚信号などはその一例である。中枢神経系はこのような有用でない感覚入力信号に対して、ただ受動的に興奮させられているのか?私達の最近のサルの大脳皮質及び脊髄を対象とした電気生理学的実験から、運動時にはすべての部位で運動と関連のない皮膚感覚入力が抑制されていることが明らかになった。さらに、この感覚入力に対する抑制の大きさは、行われている運動のパフォーマンス(反応時間)と正の相関があることがわかった。つまり、末梢感覚を抑制できた場合、より良い運動を行うことができたことになる。従って、生体の随意運動の際には不要な感覚入力をその入力段において抑制する働きがあり、それが運動の制御に貢献していることが示唆された。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32