進み視覚フィードバック条件下の到達運動

Reaching movement under led visual feedback

  • 大山 剛史 (岡山県立大学 情報工学部 スポーツシステム工学科)
  • Takashi Oyama (Okayama Prefectural University)

ヒトの運動制御において視覚によるフィードバック制御は大きな要素を占める.視覚フィードバック信号の遅れ時間の増大が運動制御に与える影響を調べるために,手先などの位置を遅れて表示させる実験は従来数多く報告されてきている.一方で,手先などの位置を進めて表示させた実験は行われてきていない. 本研究は視覚フィードバック信号の遅れ時間がヒトの運動制御に与える影響を調べるために,視覚フィードバック信号の遅れ時間を減らす手法について調べた.手先の位置を50ミリ秒進めて被験者に提示させることで,視覚フィードバック信号の遅れ時間を減らす条件を作成できると考え,先の時刻における手先の軌道を予測する方法について考察した.上肢の2点間の到達運動が多項式によって近似できるという仮定のもとでいくつかの条件を試したところ,2次の多項式を用いた手法によって軌道を予測できることを確かめた. 提案した手法を用いて通常条件・視覚進み条件・視覚遅れ条件の3条件のもと,利き手と非利き手でそれぞれ2点間の到達運動を計測した.3条件はランダムな順序で提示され,一つの条件について20試行を計測した.右利きの4名の被験者について軌道の終点の位置に対する時間(通常・進み・遅れ)×手(右手・左手)の影響を調べた結果,遅れ条件では終点が通常条件よりも行き過ぎること,進み条件では終点が通常条件よりも届かないこと,利き手と非利き手で視覚進み/遅れの影響に差があることが明らかになった. 結果は利き手と非利き手において視覚フィードバックの遅れ時間に対する処理が異なることを示唆するものであると考えられる.



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32