運動の視覚フィードバック誤差が疲労知覚に影響を与える

Visual feedback error of finger movement modifies fatigue perception

  • 伊藤 翔 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  • 木村 聡貴
  • 五味 裕章
  • Sho Ito(NTT Communication Science Laboratories)
  • Toshitaka Kimura
  • Hiroaki Gomi

運動中の知覚生成には、感覚器からの感覚入力だけでなく、運動指令など運動系の情報処理が関わっていることが示唆されている。我々は、筋疲労に伴って知覚される「疲労感」についても、単に疲労で生じた代謝的な変化がそのまま知覚に反映されるわけではなく、運動実行に付随する情報処理、とくに運動出力の予測過程の修飾を受けるのではないかと考えている。そこで本研究では、運動中の視覚フィードバックを遅延させ、運動予測に対する視覚的な誤差が疲労知覚に与える影響を検証した。被験者は示指の周期的な(約2 Hz)屈曲・伸展を持続的に行い、これに伴う疲労感の増減を十数秒おきに強制選択で回答した。このとき、指先位置のフィードバック映像を遅延させると、疲労感の増大がみとめられた。この回答結果は、別セッションで評価した映像遅延の弁別結果と必ずしも一致しないことから、映像遅延の認識そのものを回答したわけではないと考えられる。本結果は、視覚フィードバックの遅延で生じた運動出力の誤差情報により、筋疲労の知覚が修飾を受けたことによるものと解釈される。また、視覚フィードバックの遅延に伴い、実際の指運動において課題の周期に対する位相遅れが観察された。背景にある運動制御や疲労感の知覚との関連性について考察する。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32