個人間および両手間共同力制御課題におけるエラー最小化過程の比較:組むべきは自分の手よりも他人の手、知っている手よりも知らない手?

Error minimization for interpersonal and bimanual force production: is other’s hand better partner than your own hand?

  • 阿部 匡樹 (東京大学先端科学技術研究センター)
  • 渡邊克巳
  • Masaki O. Abe (RCAST, The University of Tokyo)
  • Katsumi Watanabe

 2つの手を用いて1つの目的を達成するゴール志向性課題において、2つの手の制御の最適化にはそれぞれの手のパフォーマンスに関するばらつき(不確かさ)の情報が重要な役割を果たしうる。本研究では、このようなばらつきに関する事前情報の有無がどのように2つの手のパフォーマンスの組織化に影響を及ぼすのかを、個人間および両手間共同課題の比較を通して調べた。  2人1組のペアが、一過性把持力のピーク値を標的力に合わせる課題を2種類行った。個別課題では各々の把持力を標的力に一致させる課題、その後行われた統合課題では二人の合計把持力を標的力に一致させる課題が課された。相互のパフォーマンスの事前知識の影響を調べるため、個別課題の試技中および全試技終了後にお互いの結果が提示される情報共有群と、個別課題の試技中も全試技終了後も相手のパフォーマンスに関する情報が提示されない情報非共有群が設定された。さらに、個人が左右の手で同課題を行う両手群が設定された。  統合課題における平均誤差は、情報非共有群が他群よりも有意に小さい値を示した。エラー最小化過程に関する解析の結果、情報共有群はペア間の力配分を最適化していた一方で個々のばらつきが増大する傾向にあった。また、両手群は個々のばらつきが小さい一方、左右の力間にみられる正の相関が課題に対して負の干渉をもたらしていた。これらの結果は、相互の情報共有が変数間統合の最適化を促す一方、それによって生じる社会的ならびに生理学的制約が共同課題のパフォーマンスを制限しうることを示唆した。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32