ニホンザルの上肢同期現象 Synchronized arm motion in Japanese monkeys
一昨年に、向い合ったサルのボタン押し行動が自発的に同期する現象を報告したが、本年ではいくつかの条件を設定した実験の最終結果を報告する。結果は以下の通りである。左右のボタンを片手で数十回押す単純な課題を訓練したサルを向い合わせて、同様な課題を行わせると、1)サルの上肢運動が同期した。この際サルのボタン押し(BP)のスピードは、一致する場合と一致しない場合があったが、一致しない場合であっても、2)2頭のサルのBPのスピードは互いがハーモニクスの関係にあった。また、3)相手をビデオ再生したサル(vMonkey)としても、同様な同期が観察された。詳細な分析の結果、4)同期を成立する方向に向かって、BPのスピードが変化していることが確認された。なお、5)相手のBPの聴覚または視覚刺激のみを提示しても、速度の変化は見られたが、6)2つのモダリティーが同時に提示されているときのみ、同期が成立した。 新たな行動として訓練された本BP行動は、自然界では観察されず、したがって動物の環境適応においてなんら意味をなさないものである。本実験課題と環境が、社会適応に本来必要とされる脳システムを賦活し、そのために本研究で観察された自発的な同期現象が、派生的に生じたものであると推測される。 |