非生物の環境音による認知:手の視覚表象によるsubliminal primingは道具認知に影響するか Does the subliminal visual hand image influence on the recognizing of environmental sounds of tools?
いくつかの非生物は、それらが発する環境音によって容易に認知できるが、その脳内機構の詳細は知られていない。fMRIによる検討では、非生物の環境音の中でも人間の動作と関連するもの(例:手で操作する道具)では、運動前野を含むミラーニューロンシステム(MNS)の賦活が生じると報告されている。【目的】本研究では、MNSを活性化する手の視覚表象によるsubliminal primingが、非生物の環境音による認知の脳内機構に与える影響を検討した。【方法】13の非生物アイテムについて、動作と関連するもの(道具)としないもの(機器)に分類した。被験者には、環境音を2秒提示し、アイテムの大きさを判断させる課題を行わせ、反応時間を計測した。環境音に先行した視覚的primeとして、そのアイテムまたは手のカラー写真を33m秒提示し、無意味図形をprimeとした場合との反応時間差を計算し、priming効果とした。【結果】アイテムの場合、道具、機器に関わりなく全員で意味的priming効果がみとめられた(道具:-105 ms、機器:-156 ms)。手では、道具の場合にのみpriming効果がみとめられた(道具:-24 ms、機器:6 ms)。 【考察】本実験の結果は手の視覚表象が動作と関連した環境音認知に特異的に影響したことを示唆した。これはMNSを介した運動と認知の機能的関連を反映している可能性がある。ただしこれは予備的結果であり、被験者数を増やし、統計的に検討する必要がある。 |