眼球運動方向の自由選択における運動と選択の相反する履歴効果

Opposing effect of motor- and choice-history on following free choice

  • 望月 圭 (京都大学 大学院 人間・環境学研究科, 日本学術振興会 特別研究員)
  • 船橋 新太郎 (京都大学 大学院 人間・環境学研究科, 京都大学 こころの未来研究センター)
  • Mochizuki Kei (Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University; JSPS Research Fellow)
  • Funahashi Shintaro (Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University; Kokoro Research Center, Kyoto University)

動物は刻一刻と変化する環境のなかで適切な行動を行なうため、過去の行動とその結果を記憶し、それにもとづいて柔軟に行動を変化させる。このような先行する経験の後続の行動への影響は、履歴効果として測定できる。しかし、随意運動には必ず「その運動をする」という選択が付随し、選択によって選ばれた行為のみが実際の運動として発現される。このような運動と選択の付随性のため、先行する行動が後続の行動に与える影響を考えるとき、運動履歴と選択履歴の効果は通常分離できない。 そこで本研究では、サルに2条件の遅延眼球運動反応を行なわせ、運動と選択それぞれの履歴が後続の試行に与える影響を検討した。強制選択課題(Instructed Choice Task, ICT)においては、サルは視覚刺激によって指示された空間位置を記憶し、遅延期間ののちに、その位置を眼球運動で報告した。自由選択課題(Free Choice Task, FCT)では、手がかり刺激としてふたつの視覚刺激が同時に呈示され、サルはそのいずれを選んでも同量の報酬を得ることができた。両条件の試行をランダムに混ぜてサルに遂行させ、FCT試行においてサルが行なう選択が、先行するICT・FCT試行によって受ける影響を検討した。その結果、先行する選択は後続の試行における同一反応を促進するのに対し、先行する運動は、後続試行での同一反応の選択を妨げる効果をもつことが明らかになった。本研究の結果は、選択行動や運動発現の心理学的・神経科学的メカニズムの検討において、運動と選択を分離することの重要性を示している。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32