自発性サッカードのタイミング制御におけるドパミンの関与

Role of dopamine in the timing of self-initiated saccades

  • 國松 淳 (北海道大学)
  • 田中 真樹
  • Jun Kunimatsu (Department of Physiology, Hokkaido University School of Medicine, Sapporo, Japan)
  • Masaki Tanaka

自発的に運動を開始するとき、そのタイミングはどのような神経機構によって制御されているのだろうか。最近、基底核ドパミン系が時間知覚に関与することが示されており、適切なタイミングで自発的に運動を開始する際にもこの系が関与する可能性が考えられる。ドパミンは、線条体でD1およびD2受容体を介し、それぞれ直接経路、間接経路への信号強度を調節している。その機能を明らかにするために、私たちは両経路の相対的な信号強度を薬理学的に操作し、自発性眼球運動への影響を調べた。  視覚刺激に応じて即座に眼球運動を開始させる課題(Triggered課題)と、視覚刺激の提示後、一定の時間が経過した後に自発的に眼球運動を開始させる課題(Self-timed課題)をサルに訓練した。課題遂行中に線条体ニューロンの活動を記録し、眼球運動に関連した部位を探索し、同部に薬剤を微量注入した。D2受容体の拮抗薬(Eticlopride, n = 9)を注入したところ、Self-timed 課題では自発サッカードの開始時間が早くなったが、Triggered課題では有意な変化がみられなかった。一方、D1作動薬(SKF38393, n = 4)、D1拮抗薬(SKF38393, n = 4)、D2作動薬(Quinpirole, n = 8)のいずれを投与した場合にも、有意な影響は見られなかった。これらの結果から、自発運動のタイミングは間接経路の信号によって調節されていることが示唆された。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32