運動イメージ中に発生する事象関連脱同期量は皮質脊髄路の興奮性に相関する Event-related desynchronization during hand motor imagery is correlated with the corticospinal excitability
脳卒中片麻痺上肢に対するブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を用いた神経リハビリテーションでは、頭皮脳波中に観察される8-12 Hz成分の振幅変化を用いることが多い。運動イメージにともなって本成分が減少することを事象関連脱同期(ERD)とよび、体性感覚運動野の興奮性を反映するといわれてきたが、その詳細な検討はなされてこなかった。ERDの神経科学的基盤を明らかにすることは、BMI神経リハビリ法のエビデンスを高める上で重要な課題である。そこで本研究は、運動イメージ中にERDが生じた際の一次運動野興奮性と脊髄前角細胞興奮性を電気生理学的手法により検討した。 本研究は実験1と2から構成され、各実験とも健常成人10名で実施した。実験1では被験者は右手背屈運動イメージを行い、運動イメージ中にERDが5%, 15%に到達した際に、被験者の右手一次運動野に経頭蓋磁気刺激を与えた。運動誘発電位(MEP)、皮質内抑制(ICI)、皮質内促通(ICF)は主動筋である右橈側手根伸筋から計測した。実験2では、右母指外転運動イメージ中にERDが5%, 15%に到達した際に、被験者の右手根部正中神経に電気刺激を与えた。脊髄前角細胞の興奮性を反映するF波の出現率は右母指外転筋より計測した。 結果、実験1では、ERD強度依存的にMEPの振幅が増大し、ICIが脱抑制した。実験2では、ERD強度依存的にF波の出現率が上昇した。本研究より、ERDが一次運動野と脊髄前角細胞の興奮性の指標となることが示され、ERDがBMI神経リハビリ法の駆動信号として妥当であることが支持された。 |