運動前のMEG脳活動を用いたエラーの予測 Prediction of performance error from brain activity during motor preparation
高いスキルを身につけたプロスポーツ選手であっても、運動のばらつきは避けることのできない問題である。ばらつきは時として予期しない大きな誤差を生み出し、機器の操作ミスなどの重大なエラーを引き起こす可能性がある。運動を行う前にこういった誤差を把握することができれば、交通事故といったヒューマンエラーの防止や、誤差のコントロールによる効率的な運動学習が可能となる。 近年の研究において、運動準備期間中の一次運動野や運動前野のスパイク発火頻度が運動のばらつきに影響を与えていることが示され、運動前の脳活動もばらつきの原因ではないかということが示唆されている。そこで運動前の脳活動の変化から,エラーを引き起こすような誤差の予測可能性を探ってみることにした。ターゲットに向かう人差し指の往復運動を実験課題とし、運動前の脳活動をMEGを用いて計測した。ターゲットと折り返し点との距離を誤差と定義し、MEGセンサー信号から推定した皮質電流を用いて誤差の大小の判別を行った。その結果、被験者3人中2人でチャンスレベルよりも有意という結果を得た(二項検定 5%有意)。また学習段階で得られた重みベクトルを皮質空間上に表示すると、一次運動野、運動前野だけでなく、補足運動野や、また体性感覚野などの頭頂葉付近の電流データも選択的に選んでいることが判明した。今回の結果は高次な運動関連領域や体性感覚野もエラーに関与しており、脳の広い領域からのプランニングの脳活動を用いることでエラーの大小が判別可能であることを示唆している。 |