3ヶ月児における四肢運動の多様性と変化可能性

Diversity and changeability of four-limb movements in three-month-old infants

  • 加藤 萌 (東京大学大学院教育学研究科)
  • 渡辺 はま
  • 多賀 厳太郎
  • Moe Kato (Graduate School of Education, The University of Tokyo)
  • Hama Watanabe
  • Gentaro Taga

目的:本研究では、新しい環境中における乳児の運動を観察し、個人ごとの運動の多様性を考慮した上で、運動量と運動パターンの二側面から乳児の運動変化の様子を詳細に見た。 方法:正期産の3ヶ月児191名を対象とした。最初に、乳児をモビールが吊るしてある状態の計測用マットに仰向けに寝かせ、四肢の運動を2分間計測した(Period 1)。次に、乳児の左右どちらかの手首とモビールを紐で連結し、四肢の運動を4分間計測した(Period 2)。乳児の運動は、3次元動作解析システムを用いて手首と足首に装着した4点の反射マーカーの空間位置を追跡することによって得た。その速度情報から上肢と下肢の2分ごとの平均速度の値を計算し、そのベクトルの長さと角度をそれぞれ運動量、運動パターンの指標として用いた。 結果:対象児を日齢別に3群に分けて運動の変化を検討した(年少:90-100、年中:101-110、年長:111以上)。その結果、年少、年中群はPeriod 2後半で運動量が上昇するが、運動パターンの変化は小さく、年長群はPeriod 2前半から運動量が上昇し、運動パターンも大きく変化することがわかった。また、各群の初期状態(Period 1の状態)を運動量と運動パターンの違いにより6種類に分け、それぞれの運動の変化を検討した。初期状態はどの日齢群においても多様であった。年少群では比較的初期状態に依存した運動変化の様相がみられ、一方、年長群ではPeriod 2後半において、初期状態と異なる運動の様相がみられた。 考察:初期状態からの運動の時間発展を規定する動的機構が、発達に伴って変化すると考えられる。



Last-modified: 2012-12-18 (火) 15:56:32